歌の魅力・歌詞考察

青の時間 浜田省吾 歌詞の意味・魅力考察

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青の時間

青の時間(あおのとき)」は1990年6月21日発表の浜田省吾12枚目のアルバム「誰がために鐘は鳴る」の4曲目に収録されている楽曲です。

バブル景気に浮かれる日本に警鐘を鳴らす曲である「詩人の鐘」を表題曲とするアルバム「誰がために鐘は鳴る」は、少年から大人になった主人公が自分の人生、出会った人、愛について内省する、そんな自分の内面と向き合うようなテーマの楽曲を多く収録したアルバムでもあります。

シンセサイザーなどの新しい音が多く取り入れられる時代に反して、自身のルーツである生の音に戻りたいという想いから、生の楽器の音に拘った楽曲が多く収録されている点が特徴であり、その中でも「青の時間」は、アイリッシュ風のアレンジと、省吾さんの独唱から始まる歌い出し、夕暮れのオレンジが静かに夜に染まっていく様子が鮮明にイメージできる歌詞に思わず惹き込まれる名曲です。

恋人とのすれ違いと別れの物語であり、哀しみと共に美しさを感じる、そんな歌詞と曲のアレンジ、そして省吾さんの歌声が魅力です。

歌詞概要

https://www.uta-net.com/song/6341/

夕暮れ時、徐々に深い青に染まっていく空を背景に、家路を急ぐ車の渋滞とその中で一人車を運転する主人公の描写から「青の時間」のストーリーが始まります。

歌い出しは省吾さんの深く優しい声による独唱であり、夕暮れから空の色が徐々に移り変わる、そんな風景が鮮明に浮かぶ美しい描写が特徴的です。

渋滞の中運転する主人公は、彼女との約束に向かって車を走らせているらしいことが明かされます。

しかし、高速で渋滞に捕まり立ち往生をしています。

そして、彼女との間に結んだ待ち合わせの約束が、この2人にとって大きな分岐点となるものであることが伺えます。

これまでの多くの苦悩と葛藤の末に、2人で共に生きる約束をしたものの、主人公が姿を見せないことから、返事がないことが返事であり別れの意思表示だと悟った彼女は去ってしまうだろう、と想像する主人公。

彼女が去ってしまうことを考えた時、彼女と再び共に生きることを願う主人公の気持ちは深く沈んでゆきます。

夕暮れの空と同じように、幸せな瞬間の思い出も哀しみへと移ろい変わっていきます。

自分の想いとは裏腹に過ぎ去る時間と、伝わらない愛情に対する喪失感が吐露されています。

主人公が約束の場所に現れなかった本当の理由を知ることなく、また主人公の胸の中にある想いも知ることができず彼女は去ります。

その大きな想いとは裏腹に、去ってゆく彼女に対して何もできないあっけない自分の状況に後悔を滲ませます。

渋滞の高速道路の中、一人車のバックミラーに写る綺麗な夕暮れの色を見つめる主人公の描写で「青の時間」は静かに幕を閉じます。

歌詞の魅力考察

青の時間」は、恋愛のみならず人生における人の出会いと別れについて深く考えさせられる美しい楽曲です。

人生の中で多くの人と出会いますが、その中で恋に落ち、或いは友人として長い付き合いになる相手がいる一方で、気がつくと疎遠になったり、明確な別れが訪れる場合も多くあります。

そして、別れる理由やきっかけは必ずしも納得のいくものではなく、その本当の原因や相手の想いすら知ることが叶わないことが大半です。

歌詞に登場する主人公も、恐らく彼女との人生を決定付ける大切な約束に間に合わないこと、そして彼女が去ってしまうことを察し、深い哀しみを抱えています。

彼女は約束の場所に来ないことが主人公の答えだと理解して去って行く、と主人公は考えています。

しかし改めて考えてみると、それは主人公の考えであり、彼女がずっと約束の場所で待ち続けている可能性もあります。

このストーリーは、あくまで約束を守れなかった時点の主人公視点の歌詞であるため、その後に約束の場所で、遅れてやって来た主人公とそれを待っていた彼女が出会い、幸せな人生へと続くことも考えられます。

逆に、全てが終わったと思い待ち合わせ場所へ行くことなく諦める主人公と、来ることのない主人公を待ち続ける彼女、という展開もあり得ます。

現実でも、出会いと別れを自分の視点から一面的に捉えると、省吾さんの歌詞にあるような「あっけない」と思えることも多くあります。

しかし、そこに至るまでの多くの偶然と必然、またその裏にある想いや行動に目を向けると、様々な要因や感情が織り重なった結果であると言えます。

そう考えると、自分にとっての大切な人との関係や出会った人との繋がりを一つ一つ大切に生きていきたい、そう感じさせてくれる名曲です。

省吾さんのラブソングには、単なるハッピーエンドや別れた哀しみをテーマとする内容ではなく、もっと内省的で登場人物の視点や周囲の情景を巧みに表現した詩的なものも多くあります。

また、歌詞の中で1つのストーリーとして完結していながら、アルバムの他の楽曲やテーマと繋がるなど、解釈次第で多様な広がりを見せる点が大きな魅力であり、この「青の時間」もそんな名曲の一つです。

最後に

最後までお読み下さりありがとうございます。

青の時間」は歌詞自体も比較的短くストーリーとして多くを語らない楽曲です。

一方で、ここまでお話しした歌詞と省吾さんの独唱や美しい風景描写と音楽など、魅力の詰まった名曲でもありますので、気になった方はぜひ聴いてみて下さい。

アルバム「誰がために鐘は鳴る」の表題曲である「詩人の鐘」は以下に魅力考察をまとめていますので、よければ合わせてご一読下さい。

省吾さんのラブソングについては以下記事にまとめており、「青の時間」と同じように恋人との別れを主人公視点で描いた「丘の上の愛」など、名曲が数多くありますので、ぜひその魅力を感じて頂けると嬉しいです。

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胎教の時から浜田省吾を聴き続け、サングラスをかけて生まれた28歳。省吾さんの魅力を伝えるべくブログ執筆中。
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