アルバム紹介

浜田省吾 名作おすすめアルバム J.BOY

tsumakawa

アルバム情報

J.BOY」は、1986年9月4日発表の浜田省吾10枚目のアルバムであり、省吾さんにとって、オリコンチャートで1位を獲得した初のアルバムであり、4週にわたって一位をキープし第28回レコード大賞で優秀アルバム賞に選出された記念すべきアルバムです。

J.BOYとは「Japanese BOY」の略で、JリーグもJRも無い時代に、J〇〇という造語を作った初の事例とされています。

特に表題曲でもある「J.BOY」は、当時の世相や社会背景をテーマにしながらも、時が経つにつれて鋭さを増して深く心に突き刺さる楽曲であり、日本人全員に今こそ聞いてほしい名曲です。

アルバムは2枚組であり、DISC1とDISC2に収録されている楽曲は少年が大人になる過程を想起させるものが多く、デビュー曲である「路地裏の少年」や省吾さん特有のセンチメンタルなラブソング、軽快なロックナンバーと省吾さんの魅力が存分に詰まっています。

また、近現代の日本の成長を語る上で欠かせない敗戦と戦争をテーマとする「八月の歌」「A NEW STYLE WAR」等の名曲も収録されており、【成熟できていない日本】と【平和】に対する省吾さんのメッセージも強く感じることのできるアルバムとなっています。

収録曲

DISC 1

  • 01:A NEW STYLE WAR
  • 02:BIG BOY BLUES
  • 03:AMERICA
  • 04:想い出のファイヤー・ストーム
  • 05:悲しみの岸辺
  • 06:勝利への道
  • 07:晩夏の鐘 (Instrumental)
  • 08:A RICH MAN’S GIRL
  • 09:LONELY ―愛という約束事
  • 10:もうひとつの土曜日

DISC 2

  • 01:19のままさ
  • 02:遠くへ―1973年・春・20才―
  • 03:路地裏の少年
  • 04:八月の歌
  • 05:こんな夜はI MISS YOU
  • 06:SWEET LITTLE DARLIN’
  • 07:J.BOY
  • 08:滑走路 ―夕景 (Instrumental)

楽曲魅力・考察

DISC1

A NEW STYLE WAR

https://www.uta-net.com/song/41193/

現代の戦争」をテーマとする楽曲であり、原子力やテロ、貧富の差と固定化など、過去の歴史と社会の中で徐々に大きくなり日々脅威と深刻さを増す課題に対する警鐘とも受け取れるメッセージが魅力です。

1970年代のスリーマイル島の事故から、「J.BOY」が発売された1986年にはチェルノブイリで原発事故が発生し、東日本大震災やロシアのウクライナ侵攻による国際的な緊張感の高まりを経て、原子力は社会に欠かせないエネルギーである一方で、人類全体にとって大きな問題であり続けています。

1986年に発表された楽曲でありながら、変わり続ける時代の中で変わらないメッセージを伝え続ける名曲となっています。

BIG BOY BLUES

https://www.uta-net.com/song/3798/

BIG BOY BLUES」は、1985年-1986年にかけて放送された「華やかな誤算(TBS)」というドラマの主題歌であり、ベンチャービジネスを手掛ける学生達とその周囲で起こる出来事をテーマとするドラマの内容に合わせ、仕事と成功、人生と愛にまつわるメッセージを落とし込んだ歌詞が魅力です。

また、当時高度経済成長を経てバブルへと向かい、より一層資本主義に傾倒する日本の姿をテーマとする内容としても受け取ることのできる歌詞からは、本当の成功や目指す場所はどこか、ということを見つめ直したくなる、そんなメッセージに溢れています。

AMERICA

https://www.uta-net.com/song/8783/

AMERICA」は、少年がアメリカという異国の地で自分のルーツ、日本人としてのアイデンティティを見つめ直すストーリーであり、アルバム「J.BOY」のテーマと深く関わる名曲です。

欧米の文化で育った自分は一体何者なのか。

人は迷った時や自分の存在を見失った時に、自分の立ち位置を確認し前へ進むためにそのルーツや自分という存在を見つめ直しますが、ロックシンガーとしての省吾さんは正にその疑問を抱いていたのだと思います。

そして、それは当時の日本社会も同様であり、資本主義が加速しバブルが弾け長い停滞が始まる1990年代に向かう最中において、改めて自らのルーツとその中にあるアイデンティティを見つけ確立するタイミングに来ている。

そんなメッセージが「AMERICA」そして「J.BOY」に込められており、大切なものを今一度見つめ直したくなる、そんな名曲となっています。

想い出のファイヤーストーム

https://www.uta-net.com/song/5788/

大学時代の恋人同士が卒業し結婚するものの、生活が上手くいかずに別れてしまうというストーリーから、省吾さんの歌詞に特徴的な若すぎる故の愛にまつわる苦悩や達観した諦めと徒労感を感じ取れます。

同時に、全てが移り変わる中で多くの経験をし、それらを経て少年が大人になっていくというメッセージは、アルバム「J.BOY」に込められたメッセージとも通じるものがあり、アルバムに欠かせない省吾さんらしいラブソングです。

悲しみの岸辺

https://www.uta-net.com/song/24160/

悲しみの岸辺」は、省吾さんのラブソングらしいセンチメンタルな歌詞が魅力の名曲です。

多くの別れを繰り返し、傷つきながら自分と向き合い、人と向き合い、大切なものを見つけていく。

そんな、人生における成長と葛藤、そして後悔を落とし込んだ歌詞は、聴く度に自分の人生と重ね合わせるように聴き入ってしまう、心に響くメッセージが特徴です。

勝利への道

https://www.uta-net.com/song/11685/

勝利への道」は、人生と自分の生きる社会に希望を見出せなかった主人公が恋に落ち、チャンスを掴み夢を叶えて自分の人生を取り戻すために歩み出す、そんなストーリーとなっています。

勢いのあるロックナンバーで、窮屈な街を出ることを夢見る主人公の姿からは、「MONEY」や「マイホームタウン」とも通じるメッセージを感じ取ることができます。

晩夏の鐘

https://www.musixmatch.com/ja/lyrics/浜田省吾/晩夏の鐘/amp

アルバム「J.BOY」を作っている最中、実は省吾さんの父親が膵臓がんになり、闘病生活を余儀なくされます。

この「晩夏の鐘」は、父親の病気に直面した省吾さんがその気持ちを表現するために使った楽曲です。

しかし、気持ちを表現する言葉が見つからず、「J.BOY」においてはインストゥメンタルとして音楽のみ収録されています。

歌詞は人生を共に生きた老夫婦が浜辺を歩く姿から、その年月と行先を想起させる内容であり、自分のルーツ、人生の終わり、そして父と子というテーマからは次のアルバムである「FATHER’S SON」への繋がりも垣間見ることができます。

A RICH MAN’S GIRL

https://www.uta-net.com/song/53087/

A RICH MAN’S GIRL」は、裕福な男性と付き合う彼女、そしてその彼女に思いを寄せる主人公の葛藤をテーマとするラブソングです。

愛とお金」をテーマとする点はバラードの名曲である「丘の上の愛」と共通しており、1986年というバブル景気の世相を反映した内容となっています。

近年のライブコンサートなどで歌われることはあまりありませんが、省吾さんのラブソングらしいメッセージを感じることのできる点が魅力の楽曲です。

LONELY―愛という約束事

https://www.uta-net.com/song/4920/

LONELY-愛という約束事」は、「A RICH MAN’S GIRL」や「丘の上の愛」と同じく「愛とお金(対価)」をテーマとしながらも、タイトルの通り「孤独」にフォーカスした内容となっています。

人は根本的に孤独な存在であること。

誰かと共に過ごしていてもその事実は変わらず、愛とは単なる約束事でありはっきりと知ることのできない仕草のようなものに過ぎない、という省吾さんらしいセンチメンタルなメッセージが魅力です。

もう一つの土曜日

https://www.uta-net.com/song/4529/

DISC1のラストは省吾さんを代表するバラードの1つであり、ファンのみならず幅広い世代から人気の高い「もう一つの土曜日」です。

省吾さんの声とマッチする心に深く沁み入るバラードであり、リアレンジやベスト盤への収録、コンサートでの歌唱、他アーティストによるカバーにより永く愛されている名曲です。

片想いをテーマとしており、愛する彼女が別の誰かのことを想っており、それが必ずしも幸せな恋愛でないことが示唆されます。

主人公の視点を主としながらも、そこから想いを寄せる彼女の寂しさや苦悩が読み取れ、聴き終わった後に1本の映画を観た後のような感覚があります。

タイトルの「もう一つの土曜日」とは、彼女が拠り所とする彼と過ごす週末、彼からの連絡を待ち続ける孤独な週末、彼女と主人公が共に過ごす週末、彼女のことを想って一人過ごす主人公の週末、などさまざまな解釈ができる点が魅力であり、聴き手が「これは自分の物語だ」と思える点にも大きな特徴があります。

聴く人一人一人が自分の経験やその時々に抱いた感情を呼び起こされ、自分なりの解釈や意味を持つ楽曲として大切に聴き続けられる点と、年齢や人生のステージによって自分にとっての意味合いが変わってくる点もまた魅力的であり、多くの人に聴き続けて欲しい名曲となっています。

DISC2

19のままさ

https://www.uta-net.com/song/2493/

19歳の頃の恋愛をテーマとしており、予備校で出逢った男女の出会いから別れまでのストーリーが綴られる「19のままさ

学校を卒業して社会に出て、気がつけばかつて思い描いていた「大人」のような顔をしている自分がいる。

一方で、時を経ても尚変わらない自分自身の内面とかつて出逢った大切な人達への変わらない想いから、違和感と時の流れを感じる。

そんな、誰もが感じたことのある想いが歌詞に落とし込まれており、少年からやがて大人へと成長する「J.BOY」のアルバムテーマを彷彿とさせる楽曲となっています。

遠くへ - 1973年・春・20才

https://www.uta-net.com/song/3233/

遠くへ」は、学生運動真っ只中である1970年代における主人公の恋愛をテーマとする楽曲であり、省吾さん自身の物語とも取れるストーリーが魅力です。

今の社会、体制、仕組みではないどこか遠くを目指した若者が、壁にぶつかり、行く末に迷いながら生きていく、そんな姿を表しています。

優しく静かなメロディに乗せ、深く心に沁みる声で歌われ、派手ではないものの、省吾さん詩の魅力を感じられる名曲です。

路地裏の少年

https://www.uta-net.com/song/4890/

路地裏の少年」は言わずと知れた省吾さんのデビューシングルであり、広島から神奈川大学を経て、デビューするまでの省吾さん自身の人生と葛藤を落とし込んだような内省的な歌詞が魅力です。

デビュー時にはレコードの容量の都合でカットされてしまった3番が追加され、新たなアレンジと共に収録されています。

19のままさ」「遠くへ」に続き、省吾さんの人生にリンクするようなストーリーと歌詞のメッセージから、そのルーツと魅力を感じられる名曲です。

八月の歌

https://www.uta-net.com/song/38562/

八月の歌」は、1人の労働者の目を通して日本が抱える問題とメンタリティを浮き彫りにし、八月と切っても切り離せない戦争について言及しながら、日本のこれまでとこれからを憂う深いメッセージが魅力の楽曲です。

現代日本を語るにあたって八月は特別な意味を持つ月であり、被ばく2世でありロックシンガーである省吾さんにとってその意味はより一層大きいのだと思います。

歌詞を通じて、日本は敗戦国であり加害者でもあるという事実と戦争の不毛さを思い起こさせ、人生において勝者も敗者もいない終わり無き戦いをどう生き残るか、ひとりひとりが考え答えを出す必要があると深く考えさせられる名曲となっています。

こんな夜はI MISS YOU

https://www.uta-net.com/song/38558/

こんな夜はI MISS YOU」では、ミュージシャンである主人公の葛藤と孤独がテーマとして描かれます。

恐らく「路地裏の少年」等と同様に省吾さん自身の内面を映し出していると捉えることができる歌詞からは、眩いステージと歓声の裏で内省し葛藤する省吾さんの姿が浮かびます。

シンガーソングライターであり、詩と言葉を大切にする省吾さんの、歌詞と自身が放つメッセージへの深い想いと悩み、孤独感が伺える内容であり、これからアルバムを聴く方にもぜひ聴いて欲しい一曲です。

SWEET LITTLE DARLIN’

https://www.uta-net.com/song/2686/

SWEET LITTLE DARLIN’」は、愛する人に優しく語りかけるような歌声とメッセージが魅力の名曲です。

また、人生に傷ついた恋人への言葉であるように感じられる一方で、未来ある子供へのメッセージであるようにも感じられる歌詞は、聞き手によってそれぞれの意味を持ち、多様な解釈ができる点が特徴です。

J.BOY

https://www.uta-net.com/song/2385/

J.BOY」では、自分を押し殺して仕事漬けの日々を送っている現状に対し、心の奥底でくすぶっている想いを吐露しようとする主人公が描かれます。

かつて夢見ていた理想は手に入らず、守るべき誇りも持てない中で、何のために、何を目指して走り続けるのか、そんなことを自問自答する歌詞が印象的です。

日本人として、高度経済成長期を経て物質的に豊かになったこの国で、何を目指しどこへ向かうのか。

歌詞のフレーズひとつひとつが、失われた20年とも30年とも言われる現在の日本の状況を的確に言い表しているように感じられる点が魅力であり、日本人全員に今こそ聞いてほしい名曲です。

滑走路-夕景

滑走路-夕景」はDISC1収録の「晩夏の鐘」と同様に、音楽だけのインストゥメンタルなっています。

アルバムを通して紡がれたメッセージや各楽曲の余韻に浸るような、そんな心地よいサウンドが魅力です。

最後に

最後までお読み下さりありがとうございます。

1986年発売と約40年前のアルバムでありながら、現在でも全く色褪せることのない名曲とその歌詞の持つメッセージなど、アルバム「J.BOY」の持つ魅力が少しでも皆様に伝わっていると嬉しいです。

既に省吾さんファンの方は勿論、これから省吾さんの楽曲を聴いてみたいという方にもオススメの作品となっていますので、気になった方はぜひ手に取ってその魅力を感じてみて下さい。

最後に、Apple musicのアルバム情報をご紹介していますので、気になる楽曲があった方はぜひ聴いてみて下さい。

ABOUT ME
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胎教の時から浜田省吾を聴き続け、サングラスをかけて生まれた28歳。省吾さんの魅力を伝えるべくブログ執筆中。
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