歌の魅力・歌詞考察

陽のあたる場所 歌詞の意味・魅力考察 浜田省吾

tsumakawa

陽のあたる場所

陽のあたる場所」は、1981年3月に発売された浜田省吾12枚目のシングルです。

不倫をテーマにしたバラードであり、省吾さん7枚目のアルバム「愛の世代の前に」の先行シングルでもあります。

また、1982年2月に発売された省吾さん初のライブアルバムである「ON THE ROAD」や、2000年11月に発売されたベストアルバム「The History of Shogo Hamada “Since 1975″」、最近では「Shogo Hamada / 40th Anniversary ON THE ROAD 2022 LIVE at 武道館」に収録されるなど、長年に渡りライブコンサートで演奏されファンに愛されている名曲です。

中でも、省吾さん初の日本武道館公演と広島郵便貯金ホール(現:上野学園ホール)での音源が収録されたアルバムである「ON THE ROAD」に収録されている「陽のあたる場所」は、ファンの間でも特に人気の高い特別なものとなっています。※詳しくは後述します。

「A Place in the Sun」と「陽のあたる場所」

タイトルである「陽のあたる場所」は、スティービーワンダーの名曲「A Place in the Sun」を彷彿とさせます。

「A Place in the Sun」は省吾さんのライブコンサートで定番となっている「HELLO ROCK & ROLL CITY」の歌詞に登場し、「“A Place in the Sun” はじめて歌ったR&B」と歌われています。

また、1983年8月に福岡にある海の中道海浜公園で行われ、25000人を動員した省吾さん初のワンマン野外コンサートは「A PLACE IN THE SUN」と銘打たれており、1996年2月発売のコンピレーションアルバム「ROAD OUT “TRACKS”」では、省吾さん自身がほぼ原曲のアレンジのままカバーしています。

このように、「A Place in the Sun」は省吾さんにとって特別な意味を持つ楽曲であり、それと同じタイトルである「陽のあたる場所」にも多くのメッセージが込められています。

ここからは、そんな「陽の当たる場所」について、歌詞の詳細と魅力をご紹介していきたいと思います。

歌詞概要

https://www.uta-net.com/song/3850/

陽のあたる場所」では、寂しさから恋に落ちた二人の恋人の姿が描かれます。

単なる幸せに満ちたラブソングではなく、さまざまな事情や影が混在する複雑な恋愛模様をテーマとしている点は正に省吾さんらしい部分であり、それがリアリティとなり心に響きます。

主人公に家庭があるらしいこと、それを分かった上で逢瀬を重ね、束の間の幸せを享受している状況が明かされます。

置かれた状況を直視し将来を考えてしまえば容易く壊れてしまう関係であることを互いが理解しており、だからこそ本気でないように、遊びであるように誤魔化している様子から、幸福ばかりではない恋愛について考えさせられます。

そんな関係の最中にあって、季節が巡り時が過ぎる中で恋人に対する罪悪感が募ります。

恋人からの愛に本当の意味で応えられない自分、何も報いることができない自分を許せず、悲しみに沈む様子が描かれます。

関係を続けることで相手の人生を壊してしまう、そう感じた主人公は別れを切り出します。

家庭がある自分自身の人生ではなく、恋人の人生を引き裂いてしまう、と言っていることから、単なる保身ではなく、心の底から相手を愛していることから出た言葉であることが伺えます。

恋人には、不倫をしていながら一方的な別れを告げられたことに対し、一時の感情や浮ついた気持ちで弄ばれたように映ったかもしれません。

それでも主人公は、相手を本気で愛していたこと、その気持ちに偽りがなかったことを伝えようとします。

愛しているからこそ、相手の人生を想うからこそ自分の過ちと決別し、相手の幸せを願う。

しかしそのことが伝わらない、相手の人生を想って関係を断つには寧ろ伝わらない方がいいのかもしれない。

そのような苦悩を抱え「陽のあたる場所」は幕を閉じます。

歌詞の魅力考察

この歌詞は、自分にとっての「陽のあたる場所」を見つけることの大切さを歌っているように感じます。

そして問題は、自分にとっての「陽のあたる場所がどこなのか」という点です。

私は、「陽の当たる場所」とは、自らがありのままでいられる場所だと考えています。

言葉にしてしまえばありふれた内容ですが、自分が自分らしく本当の意味で自由で満たされていると感じる時、その場所こそが自分にとっての「陽のあたる場所」であり、人生で目指すべき場所だと考えています。

そして、それは人によって異なり、場所であったりシチュエーションであったり誰かの存在を指すものだと思います。

ただ、それは言葉で言うほど単純ではなく、仮に自分にとっての「陽のあたる場所」を見つけ、そこで人生を過ごせるなら、それほど幸せなことはないのかもしれません。

A Place in the Sun

スティーヴィーワンダの名曲である「A Place in the Sun」は実はスティーヴィー自身が書いた曲ではありません。

しかし、生まれつき目の見えない彼にとっては他の場所よりも暖かい「陽のあたる場所」は心地よく、より特別な場所であるように感じられたのではないかと思います。

だからこそスティーヴィの歌う「陽のあたる場所」を探し続けて前進する人生をテーマとする「A Place in the Sun」が人の心を打ち、色褪せない名曲として語り継がれているのだと思います。

アルバム「ON THE ROAD」における「陽のあたる場所」

冒頭でアルバム「ON THE ROAD」に収録されてされているライブ音源ver.の「陽のあたる場所」は特別だとご紹介しました。

何が特別なのかと言うと、それは曲の合間に省吾さんの語りが収録されている点にあります。

ファンなら誰もが知っている有名な語りの部分、それがこの「陽のあたる場所」と「A place in the sun」を強烈に結びつけているように思え、聴くたびに強烈に引き込まれます。

以下が、収録されている省吾さんの語り部分を文字に起こしたものです。

まだ若かった頃、貧しくて、寂しくて、

すぐ目の前にある慰めを愛だと思い、

夢中になれるものを夢だと思って、手にいれてしまう。

だけど、やがて少しずつ大人になっていき、

初めて本当の愛や、本当に欲しかった物に出会ったとき、

人は時に、そこからは遠く離れてしまっていることがある。

どうか皆が、そして僕も、

真実の愛や本当の夢に巡り会えて、

それを手にすることができるよう、祈ってます。

浜田省吾「陽のあたる場所」

これこそが正に省吾さんの言う「陽のあたる場所」であり、本当の意味で自分らしく望む人生を生きることが大切だというメッセージだと捉えることができます。

自分にとっての陽のあたる場所はどこか。

居心地の良い居場所とはどこか。

それを求める時、時に人は迷い、間違い、目の前にあるものの一面的な魅力に惑わされ、それを手に入れ満足してしまう。

しかし、そこで満足したつもりになって立ち止まっている間に、本当の夢や大切なものは遠く離れていってしまい、気が付いた時にはやり直すこともできない人生の中で、深い後悔を抱えている。

そんな想いや憂いが現れているように感じられます。

雨の日も曇りの日もあり、時に辛い現実と寂しさに向き合わなければならない結婚生活に疲れた主人公が、一時の安らぎを得られる、寂しさを紛らせることのできる恋に落ちてしまう。

そんな主人公の見つけた「陽のあたる場所」も、最後には自分にとって本当の意味での満たされる場所ではないことを悟り、辛い現実と向き合い、再び安らげる場所を探す人生に足を踏み出す。

歌のストーリーを通じ、本当の意味での「陽のあたる場所」を追い求める大切さと難しさを伝えているのではないでしょうか。

叶わない恋を歌った「紫陽花の歌」や耐え難い失恋の辛さを歌った「片想い」にも通じるものがあり、人間の脆い心や葛藤が美しいメロディと歌詞に込められています。

そして、そこにあるリアリティと優しさが、省吾さんの楽曲の素晴らしさを際立たさています。

省吾さんのオススメバラードについては以下記事にまとめています。

最後に

最後までお読み下さりありがとうございます。

「陽のあたる場所」は、不倫をテーマとするラブソングと言われることが多いですが、「A Place in the Sun」との繋がりや省吾さんの想いを合わせて聴いてみると、歌詞のストーリーの裏に単なる悲哀のラブソング以上のメッセージが詰まっていることが分かります。

今回の記事を読み、「陽のあたる場所」や省吾さんのその他の楽曲や背景に興味を持って下さる方が増えると嬉しいです。

「陽のあたる場所」の特別ver.である武道館音源が入ったアルバム「ON THE ROAD」のリンクも貼っておきますので、気になる方は合わせてチェックしてみて下さい。

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胎教の時から浜田省吾を聴き続け、サングラスをかけて生まれた28歳。省吾さんの魅力を伝えるべくブログ執筆中。
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