歌の魅力・歌詞考察

いつわりの日々 歌詞の意味・魅力考察 浜田省吾

tsumakawa

いつわりの日々

いつわりの日々」は、1979年5月に発表された省吾さん4枚目のアルバム「MIND SCREEN」の5曲目および、1983年発表の省吾さん初のセルフカバーアルバム「SAND CASTLE」4曲目に収録されている楽曲です。

アルバム「MIND SCREEN」は、1979年当時定められていた発売日に対し、省吾さん自身「曲は書けるが詞が全く書けない失語症のような状態」と語る状態にあり、詩が書けなかったために10曲中6曲が当時売り出し中だった女性作詞家が担当している、珍しいアルバムとなっています。

そのため、あまり大々的に触れられることのないアルバムであり、ライブコンサートで演奏されることもほぼありません。

また、省吾さん自身「自分の言葉で詩を書かなければどうしても歌詞を覚えることが出来ず、自分の歌にならないことが分かった」と語っており、歌詞を作ることの大切さを改めて認識したアルバムのようです。

一方、「MIND SCREEN」において省吾さんが作詞した楽曲は4曲ありますが、いずれもファンの間で根強い人気を誇る楽曲となっています。

今回はその中から、結婚した男女の別れの物語である「いつわりの日々」についてその内容と魅力をお伝えします。

世の中に恋人の別れをテーマとするラブソングは多くありますが、結婚した夫婦の別れをテーマする楽曲はそう多くないように思います。

また、共に暮らしている夫婦の心が離れていく過程や、出会った頃と変わってしまった互いの心をリアルに歌詞のストーリーとしている楽曲は中々無く、特に同じような経験をしたことのある方には大きく響く歌詞となっています。

歌詞概要

https://www.uta-net.com/song/693/

結婚をして共に暮らすようになり、年月が経って当初と関係性が変わってしまった夫婦の様子から「いつわりの日々」のストーリーは始まります。

恋人同士だった頃と囁く言葉は同じでも、その意味はまるで違う。

それは、生活を共にする中で互いの良い面も悪い面も知り、小さな不満やストレスが積み重なった結果、互いに干渉しないように、深入りしないように距離を置くようになってしまったことが原因のようです。

近づかなければ傷つけることもない一方で、心の距離は離れるばかりです。

そうして、日々を過ごすだけの様子が細かい心理描写と共に語られます。

同じベッドで寝ていてもそこにかつての愛はなく、互いに別々の方向を向いている。

1人が生活に安定や安らぎを求める一方で、もう1人は自由気ままな人生を望んでいる。

それは、陰鬱とした家庭からの解放を求めた結果でもあり、元々見据えていた理想の生活に相違があったのかもしれません。

互いに距離を置き別々の理想を追い求める2人ですが、かつては希望と幸福に満ちた未来を夢見ていたこと、そしてそれが少しずつ冷めていき、その頃の想いすら忘れてしまうほど心が離れてしまっていることが示唆されます。

結婚して、苦労を乗り越えて、多くの困難を2人で協力して乗り越えてきた夫婦。

ただ、そんな生活の中で積み重なった互いへの不満やストレスがやがて別れをもたらす。

何が悪かったのか、その理由を探しても見当たらない。

決定打やきっかけがあったわけではなく、静かにゆっくりと互いの愛が冷め、心が離れてしまった。

苦しい時を寄り添って歩いていたはずが、いつしか別々の方向を目指している。

そんな夫婦の別れを予感させ「いつわりの日々」は幕を閉じます。

歌詞の魅力考察

いつわりの日々」は離婚や夫婦の愛情の終わりをテーマとする楽曲です。

互いに相手へ本心を隠していると言うよりは、どちらかというと「このままで良いのか」という葛藤を持ちながらも、自分自身の本心に向き合わずに日々を過ごしている、という点を指して「いつわりの日々」というタイトルとしているように感じられます。

物事には始まりがあれば終わりがあるように、省吾さんのラブソングはその終わりにスポットを当てたものも多くあり、必ずしも上手くいかない恋愛や、その葛藤や哀しみテーマとする楽曲として、「片想い」「陽の当たる場所」「愛という名のもとに」など、多くの名曲の存在があります。

その中にあってこの「いつわりの日々」は、リアルな歌詞と2人の離れてしまった心や距離感の描写が胸を打つ名曲です。

最初から別れを望む夫婦がいない一方で、離れた方が互いの為になる、そんな避けられない別れも確かに存在します。

傷つけ合うことは夫婦にとって良いことではありませんが、互いに深入りせずに一定以上の距離を取って暮らし、その距離がどんどん離れ、傷つけ合う悲しみがない代わりに喜びを分かち合うこともない関係では、共に寄り添って生きることはできません。

そんな生活の最中にあって、少しずつ別れの足音が近づいてくることを感じる。

そんな「いつわりの日々」のストーリーは、誰もが人生で一度は考える「結婚」に対する、リアルな一つの側面を確かに切り取っています。

仕事、結婚、人生において、誰もが思うように望むまま幸福に生きられるわけではありません。

時に予期せぬ苦労に見舞われたり、愛する人を失ったり、生活する中で互いに心が離れてしまうこともあります。

そして、それは誰の身にも起こり得ることであり、その意味で他人事ではありません。

だからこそ、愛の終わりをテーマとする省吾さんの歌の中にあるストーリーや言葉が、聴く人の心に深く沁みるのだと思います。

辛い時や苦しい時に自分の気持ちの拠り所となり、自分自身の葛藤や哀しみと向き合う助けとなる、そんな名曲が「いつわりの日々」であり、省吾さんのラブソングの魅力でもあります。

最後に

最後までお読み下さりありがとうございます。

アルバムの発売日に合わせ決められたタイトなスケジュールの中で、歌詞が出てこない自分自身の苦悩と闘い、葛藤する中で書き上げられた楽曲がこの「いつわりの日々」です。

決して一般的に広く知名度のある楽曲ではありませんが、省吾さんファンとしては外すことのできない名曲です。

既に省吾さんのファンである方は勿論、これから省吾さんのファンになる方にも是非とも今一度聴いていただき、その魅力を感じ取って頂けると嬉しいです。

最後に「いつわりの日々」が収録されているアルバム「MIND SCREEN」と「SAND CASTLE」をご紹介しますので、興味のある方はぜひ聴いてみて下さい。

また、省吾さんのラブソングや歌詞の魅力については以下記事でまとめていますので、良ければ合わせてご一読下さい。

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胎教の時から浜田省吾を聴き続け、サングラスをかけて生まれた28歳。省吾さんの魅力を伝えるべくブログ執筆中。
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