歌の魅力・歌詞考察

RISING SUN ―風の勲章 歌詞の意味・魅力考察 浜田省吾

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RISING SUN ―風の勲章

RISING SUN ―風の勲章」は1988年発表のアルバム「FATHER’S SON」収録曲であり、「アメリカと日本」「父と子」の関係性を通じ戦後日本をあり方を問うアルバムテーマにふさわしい名曲となっています。

FATHER’S SON」では、1986年に発売したアルバム「J.BOY」から時が経ち、少年から大人へと成長した主人公が描かれます。

歳を重ねた主人公は、アルバムを通して自分の人生、恋愛、ルーツ、経験を振り返りますが、その根底には父親の存在が自らを形成する上で大きな部分を担っていることが描かれています。

そして、単純な親子としての「父と子」だけではなく、日本という国からしてみれば、現代社会は戦後に形成されたものであり、その礎を築いたのはアメリカである点を考慮すると、現代日本社会の「父親」は正に「アメリカ」であると言えます。

そして、その文化を色濃く反映するロックミュージックの担い手である省吾さん自身の生き方と、被爆2世であるという生い立ち、また日本という社会の発展が常にアメリカを始めとする諸外国の思惑とバランスにより支えられていたことを考えると、戦後生まれの省吾さんにとって、避けては通れないテーマだったのではないかと思います。

また、アルバムリリース前に警察官であった父親を亡くされたことも「FATHER’S SON」に大きな影響を与えています。

少年が成長し大人になり、社会が発展し豊かになる中で、本当に大切なものや目指すべき場所を見極め再確認し、強く生きていくために自分自身のルーツに立ち返る必要がある。

そんなメッセージがこの「RISING SUN―風の勲章」には込められています。

歌詞概要

https://www.uta-net.com/song/41194/

RISING SUN―風の勲章」は、1945年に戦争に負け、そこから高度経済成長を経て1980年代にかけ大きく成長した日本と、沈みつつある夕日のように終わりを迎えつつある日本を、スクラップアンドビルドで再興しようと奮闘した先人達の決意と覚悟が伺える歌詞から始まります。

他の楽曲の歌詞と比較しても非常に印象的な歌い出しであり、戦後の焼け野原の状態から経済的にも国際的にも大きく飛躍した日本のストーリーを彷彿とさせます。

貧しさと敗戦の経験をバネとし、昨日より豊かな今日と、今日より明るい明日を目指し無我夢中で走ってきた、そんな復興の苦悩と歴史が感じられます。

かつてとは比べ物にならない程モノに溢れ物質的に豊かになった現代社会において、当たり前のように享受している富と平和で溢れた生活を作り上げる過程の中で何があったのか。

どのように現代日本という国が形作られ、この先どこへ進んでいくのか。

そのことに目を向けず、ひたすらに目の前の物質的な豊かさと画一化された幸福のみを追い求めようとする社会に対する批判と警鐘が読み取れます。

資本主義に傾倒しモノで溢れた社会の中で人と人との関係性が希薄となり、本当に大切な物、守るべきものの存在が曖昧になっていく。

そんな社会の現状を表た歌詞が魅力です。

また、行き過ぎた資本主義に対する警鐘という点では「MONEY」のメッセージと通じるものがあり、メディアの作り上げた幸福や価値観を是とし、本当に望むものや幸福が次第に見えなくなっていく姿を表しているように感じられます。

今日より豊かな明日を目指して走り続けてきたはずが、いつの間にか本当に大切にすべきものの存在や目指すべき豊かさを忘れ、刹那的な快楽を求めるようになってしまった社会の姿が語られる歌詞が印象的です。

資本主義に傾倒する中で金銭的な豊かさだけが絶対的な価値観となり、守るべき誇りや目指すべき目的地を見失った社会において、何を抱いてどこに進んでいくべきか、そのことに対する迷いが伺えます。

1945年に戦争に負け、何もかもを失った後奇跡的とも言える速さと力強さで復興と成長を遂げた日本。

戦争が遠い昔の歴史となり、平和と豊かさを享受できるようになったこの国において、現代社会は何を目指しどこに向かっているのか。

本当に大切にすべきものと守るべきものは何なのか、そういったことを問いかけるようにこの「RISING SUN」は幕を閉じます。

歌詞の魅力考察

RISING SUN」は、現在の日本社会の構造と豊かさのルーツとして確かにそこにある1945年の敗戦への想いと、その記憶と認識が薄れ、行き過ぎた資本主義に傾倒しつつある現代社会への批判が込められています。

現在の自分を見つめ直すために自分のルーツを辿る時、そこに生みの親である父親があるように、日本の現在を考える時、そこには必ず敗戦とアメリカの存在があります。

人は自分の将来や進むべき道に迷った時、現状の自分の置かれた状況を知るためにそのルーツに想いを馳せますが、省吾さんにおける「FATHER’S SON」と「RISING SUN」も、正にそのような作品だったのではないかと思います。

ON THE ROAD 2011 “The Last Weekend”

「RISING SUN」と言えば、ON THE ROAD 2011において上映されたPVアニメーションも印象的です。

加藤隆(かとうりゅう)さんという映像作家が手がけた作品で、タクシーを運転する主人公が自分の幼少期からの人生を振り返る内容となっており、「RISING SUN」の持つメッセージとマッチしたストーリーと、絵の具を塗り重ねて撮影を繰り返す「ドローイング」と呼ばれる手法により作成されたアニメーションがマッチし、とても味わい深い作品となっています。

加藤隆さんは米津玄師の「パプリカ」やヨルシカ「月に吠える」等のMVも制作されており、「RISING SUN」も合わせていずれもyoutubeで視聴可能ですので、気になる方は是非その魅力を感じてもらえればと思います。

最後に

ここまでお読み下さりありがとうございます。

RISING SUN」は、1988年発表でありながら現代でも色褪せない歌詞とメッセージが魅力であり、正に世代を超えて聴き続けてほしい名曲です。

最後に、「RISING SUN」の収録されているアルバムをご紹介しますので、興味を持って頂けた方はぜひ聴いてみて下さい。

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胎教の時から浜田省吾を聴き続け、サングラスをかけて生まれた28歳。省吾さんの魅力を伝えるべくブログ執筆中。
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